形から入るのが大事だ。
そう思い、頭皮でマッシュルームの栽培を始めた。
黄色い潜水艦をローンで購入し、横断歩道も毎日歩いた。
それでも、どうしてもメロディが思い浮かばない。
私は天才ではなかった。
限界を感じ、洋楽を聞くのを辞めた。
その頃には、西洋を感じるもの全てに拒否反応を示すようになってしまっていた。
引っ越しを決意し、文机と薄い座布団だけの畳の部屋で生活を始めた私は、ほどなくして足やお尻に慢性的な痛みを抱えるようになった。
そこで私はあらゆる座布団を買い漁り、自分に合う座布団を追い求めた。部屋はあっという間に座布団で一杯になり、理想の座布団に出会った頃にはもはや生活もままならないほどになってしまっていた。
不可思議な団体と出会ったのはちょうどこの頃だ。その団体は、座布団を大量に仕入れたいと言ってきた。不要になった座布団の貰い手を探していた私には渡りに船であった。
その団体との関係は現在も続いている。今や私は、団体の下請け業者と言っていい。
一度で大量に発注するのではなく1枚ずつでの発注を何度も繰り返してくること、時に大量に返品してくること、マッシュルーム栽培で傷んだ髪をイジってくること。
不満を挙げればキリがないが、彼らは私にとって大切な唯一の得意先だ。そして彼らに座布団と幸せを運ぶことが、私の生きがいなのである。
いつもの音楽が流れてきた。
さあ、仕事の始まりだ。
私の名を呼ぶ声が、号砲のように響いていた。