けんたくんは、いぬのこたろうともりのなかをあるいていました。
するとめのまえから、ながねぎをもったおおおとこがあるいてきました。
おおおとこは、けんたくんにいいました。
「このやさいのなまえをしってるかい?」
けんたくんはすこしおびえながらこたえました。
「ながねぎ。」
おおおとこは、つづけてこうききました。
「このながねぎは、ながくみえるかい?それとも、みじかくみえるかい?」
けんたくんは、
「おじさんがおおきいから、みじかくみえるよ。」
とこたえました。
するとおおおとこは、ながねぎでひだりてをぽんぽんとたたきながらこういいました。
「じゃあこのやさいは、ながねぎといえるのかな?」
けんたくんはしつもんのいとをはかりかねながらも、きぜんとしたたいどでこうかえしました。
「そりゃながねぎだよ。このやさいはながねぎなんだから。おじさん、そんなこともわからないの!」
おおおとこは、そのことばをきくやいなや、きみのわるいえがおをうかべました。
そして、けんたくんにながねぎをてわたしながらこういいました。
「ごめんごめん。でも、よくみてみてよ。」
けんたくんは、そのながねぎをみておどろきました。
いつもおかあさんがスーパーでかっているながねぎよりも、とてもとてもみじかかったのです。おおおとこがもっているからみじかくみえているわけではなかったのでした。
けんたくんはとまどいながらも、こうこたえました。
「な、ながねぎだよ!これはながねぎっていうなまえなんだから!」
おおおとこは、おおきなこえでわらいはじめました。
「はっはっはっ。みじかくてもながねぎか。きみくらいのねんれいでもそうなんだね。」
けんたくんは、そのことばのいみがよくわかりませんでした。
「ぼくが5さいっていうのがなにかかんけいあるの?」
おおおとこは、ながいあしをまげてけんたくんとめせんをあわせ、こういいました。
「まだわからなくていいんだ。せめられるべきは、このくにのおえらいさんたちなんだからね。さあ、これをもっていえにかえりなさい。いつかわかるひがくるよ。」
けんたくんがぽかんとしていると、こたろうがながねぎをけんたくんのてからうばうようにくわえ、いえのほうこうへはしっていきました。こたろうをおいかけてはしるけんたくんのせなかにむけて、おおおとこはさけびました。
「おきなわでかれーやにいくんだ!そこにひんとがある!」
それからすうねんがたって、けんたくんはすっかりこえがわりし、こたろうもすっかりおじいさんになっていました。
なつやすみにかぞくでおきなわにいくとおとうさんにいわれたとき、けんたくんはとっさにこうこたえていました。
「かれーやにいきたい!」
おとうさんは、けげんそうなかおをしました。
「だめだよ、おきなわといえばそーきそばかおきなわそばだろ。かれーなんかたべないよ。」
けんたくんは、みずからのちちおやのあたまのかたさにがくぜんとしました。そして、すうねんまえのもりでのできごとをおもいだしました。
「そうか。ながねぎでも、みじかくみえたらながねぎじゃなくていいんだ。きぞんのがいねんにとらわれていてはだめなんだ。」
そこからいっしゅうかんで、けんたくんはかれーのかおりがするはなせんのあいであをまとめあげ、ありとあらゆるめーかーへぷれぜんにいきました。そしてはんとしご、とうとうしょうひんかにこぎつけました。
きゅうかくでみかくをまどわせることでにがてなものでもおいしくたべられるとあって、そのしょうひんはみるみるうちにだいひっとしました。
しんぶんのいんたびゅーでこのしょうひんをつかってたべてほしいものをきかれたとき、けんたくんはこうこたえました。
「きざみねぎ。」